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司法書士兵庫太郎の事件簿

山田さん :
...私がいた会社は、従業員が5人ぐらいいました。会社に入る前は、社長さんから、「残業はないよ。」と言われていたんですが、実際には、毎日2、3時間くらいの残業があたり前ということが会社に入ってすぐに分かりました。もう毎日しんどくて、途中からは社長さんの顔を見るのもイヤでイヤで。
兵庫(司) :
それは大変でしたね...。まず、従業員さんに残業させるためには、「残業させることができる」ということが就業規則に書いてあって、それを労働基準監督署に届けていないといけないんですよ。
会社の就業規則を見たことがありますか?
山田さん :
いえ、そんなもの見たこともありません。多分、作ってないですよ。本当にいい加減な会社なんです!私、よくがまんしてこれたと思います!なんだかものすごく腹がたってきました!
兵庫(司) :
まあまあ、そう興奮しないで。
残業代はいくらか払ってもらっていましたか?
山田さん :
一応、お給料の明細に「残業代」という項目がありました。
兵庫(司) :
毎月いくらぐらい?
山田さん :
それが先生!1万円だったり5000円だったり。ろくに計算もしていないはずですよ!
挙句の果てには、半年くらい前なんですけど、社長から、「不景気の影響もあって、悪いけど今後残業代は一切払えないよ。」と言われました。会社の業績が大変なのは分かりますが、1円も残業代を払ってもらえなくなるなんて...。最初は仕方がないかなとも思ったんですが、やっぱり納得できません!!
兵庫(司) :
ううーん。それはますます困りましたね...。
山田さん :
先生!本当にそう思っています!?私にとっては大変なことなんですよ!
兵庫(司) :
はいはい。そんなにエキサイトしないで下さい。
とにかく、山田さんのご希望は払ってもらっていない残業代を請求したいということですね。
山田さん :
そうです!私はできれば、4年前からの分全部を請求したいんです。どうやって請求したらいいですか!?いくら請求できますか!? どのくらい時間がかかりますか?いつ払ってもらえますか?先生の費用はいくらかかりますか?それから...。
兵庫(司) :
おっとっと。はやるお気持ちはわかりますが、順番に考えていきましょう。どのくらいの残業代が未払いになっていて、どのくらい請求できそうなのか、まずそのあたりから確認していきましょうか。時効の問題もありますしね。
山田さん :
すみません。ついつい先走ってしまいました。
兵庫(司) :
じゃあ、まずは基本の勤務時間からお尋ねしていきますね...。
山田さん :
...私の会社にはタイムカードはなかったんです。でも、残業時間は大体手帳につけていました。そうそう、毎日帰る時に彼にメールしていましたから退社の時間も分かります...。
兵庫(司) :
...ふむふむ...。

こうして、司法書士の兵庫さんは、山田さんからの聞き取りを続けました。気がつくと、1時間が経っていました。

司法書士の兵庫さんは,山田さんが持ってきた勤務時間の手帳のメモや採用された時に受け取った書類や聞き取った内容を参考にして,どのくらいの残業代が未払いになっていて,そのうち,どのくらい請求できるのかを計算してみました。
すると,全部で120万円くらいの残業代が請求できそうだということが分かりました。

山田さん :
120万円も!! 先生!すぐにでも裁判して,請求して下さい!
兵庫(司) :
うーん,お気持ちは分かりますが,何でもかんでも訴訟,というわけにはいかないんですよ。
山田さん :
どうしてですか?残業代払ってもらっていないのは事実でしょ!?裁判したら勝てるでしょ!?
兵庫(司) :
ううーん、裁判するからには,訴える側が証拠を出さないといけないというルールがありましてね。
山田さん :
証拠なら私の手帳で十分じゃないですか!あと、私の彼も証人になってくれます!
兵庫(司) :
いやいや。証拠と一口に言ってもね,そう単純な話ではないですよ。それに、A会社に請求する方法は裁判だけではないですしね。
山田さん :
じゃあ、他にどんな方法があるんですか?
兵庫(司) :
司法書士の私ができるのは、①会社の社長と直接交渉する ②内容証明郵便で請求書を送る ③労働審判の申立書類を作る ④簡易裁判所での調停や訴訟をする といった方法があります。
山田さん :
どの方法が一番いいですか?
兵庫(司) :
どれが一番というのはありません。会社の対応も分かりませんし。ただ、しっかりとした証拠がないままに、いきなり裁判というのも果たして得策なのかどうか...。まずは、社長とじっくり話しをしてみてはどうで...
山田さん :
先生!!もう私あの社長の顔も見たくありません。会社を辞める前に残業代の話を切り出したら、頭ごなしに怒鳴られて...。全く話にならなかったです!
兵庫(司) :
そうですか...。それでは、社長宛に,残業代の支払を請求する内容証明郵便を送ってみてはいかがですか。
山田さん :
それで払ってくれますか?
兵庫(司) :
それは分かりません。でも、すんなり払ってくれないとしても、山田さんの言い分をはっきりと伝えることは大事じゃないかと思いますよ。

司法書士兵庫さんは,内容証明郵便を作成し,A株式会社宛に郵送しました。10日ほどして,A会社から司法書士兵庫さん宛に返答の書面が内容証明郵便で届きました。
書面の内容からすると,どうも,残業代を払う意思は全くなさそうです。
山田さんは、司法書士兵庫さんと相談した結果,簡易裁判所に訴訟を提起することにしました。

兵庫(司) :
昨日,訴訟を提起しました。しばらくしたら,簡易裁判所からA会社へ訴状が郵送されます。もしかしたら,A会社から和解を申し出てくるかもしれませんよ。
山田さん :
和解したほうが有利なんですか?
兵庫(司) :
有利な場合もありますし、そうでない場合もあります。和解となると,早く解決できる場合もあるという点はメリットでしょうね。逆に,山田さんがA会社から支払ってもらえる金額は,現在請求している金額よりも少なくなるというデメリットもあります。和解なので、こちらも譲歩しないといけませんから。
山田さん :
うーん,そうなんですか...。けど,出来るだけ早めに解決したいです。長引くと精神的にもしんどいですし。金額が少なくなってもある程度はかまいません。

1回目の裁判の期日の後,A会社から和解の申し入れがありました。司法書士兵庫さんの予想通り,提示された金額は,請求している金額よりも少ないものでした。
山田さんには,早く解決したいという思いがある半面,もう少し残業代を支払ってくれてもいいのに,という思いもありました。そこで,司法書士の兵庫さんといろいろ話合った結果,A会社が提示した金額で納得し,和解することにしました。

無事に和解金の支払を受けてから数カ月後,山田さんが再び司法書士兵庫さんの事務所にやってきました。

山田さん :
残業代,支払ってもらえて本当に良かったです。お世話になりました。私は3カ月前から別の会社で頑張って働いています。
兵庫(司) :
そうですか。わざわざ近況を報告に来ていただいてありがとうございます。
山田さん :
ところで、今の会社の社長さんはとっても人柄がよくて、残業もなく、とても働きやすい会社なんですが,お給料を2カ月間支払ってもらっていないんです。社長さんは、『本当に申し訳ない。来月まとめて必ず払うから。』と平謝りされるんで,待つしか仕方がないのかなあ,と思っていたんです。
ところが,最近,取引先の方から、私の会社が倒産寸前だという噂が業界で流れていると聞いたんですよ!
もし,会社が倒産したら,私の未払いのお給料はどうなるんでしょうか。
兵庫(司) :
原則は、倒産した会社を相手にして請求することになります。でも、倒産してしまったら実際には払ってもらえませんよね。
そのように給料や退職金の支払を受けることが出来ない場合には,一定の範囲で,代わりに支払ってもらえる制度もありますよ。
山田さん :
そういう制度もあるんですね。安心しました。いつ倒産しても大丈夫ですね!
兵庫(司) :
いやいや、安心されても困りますが...。
山田さん :
まぁ,会社が倒産しないのが一番ですよね。そうならないように,私も仕事を頑張ろうと思います!
兵庫(司) :
うんうん。前向きな姿勢、いいですね。
私も山田さんを見習って,たまっている仕事を片付けていかないと...。
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